あらすじ
しがない大学生のわたしはいつも通りバイトをこなした後、日課であるオナニーのおかずを探していた。
そしてエロゲ販売サイトで見つけた『脱出ETD!サキュバスの作った最新ダンジョンから逃げ出せ!!』を購入すると突然眠気がやってきて……
本編
「んむ……」
意識を取り戻すと、視界に映ったのは無機質な白い天井だった。
ぼんやりとした頭が一気に覚醒する。
わたしが借りている安いアパートはこんなきれいな色をしていない!!
バッと毛布をはがして辺りを探る。
どうやら四方が天井と同じ材質でできた白い壁で囲われているようだ。ただ、足元の方向にだけくぼみがある。形からスライド式のドアだろう。
拉致られた?
不透明な状況に不安を抱えながら立ち上がり、全身を覆う布の感触がないことに気がついた。
「わたし全裸なんだけど……」
洋服どころか、ご丁寧に下着まで脱がされている。
人のことを拉致?した上に衣服をはぎ取るとは……
呆れ半分で、先ほどまで掛かっていた毛布で身体を包む。
いくら人の目がないとは言え、この部屋にカメラでもついていたら叶わない。
「ふぅ」
ベッドに腰かけ、毛布の温かみに人心地つく。
混乱した頭も落ち着いてきたことだし、まずはゆっくりと記憶を追ってみよう。
確か、昨日は……
◇ ◇ ◇
「づかれたー」
バイトから帰宅してメイクを落としたわたしは一人、浴槽の中でつぶやく。
大学生活にバイト。
いくら親の仕送りがあるとはいえ、一人暮らしは楽ではない。女ともなればなおさらだ。
現代社会においても痴漢や強姦など、性的被害には事欠かない。
幸いなことに、わたしはまだ被害にはあっていない。だが、一人暮らしはそのリスクを跳ね上げる。
大学入学にあたって親とはもめにもめたが、なんとか勝利をつかむことができた。
親と喧嘩してまで一人暮らしがしたかった理由はいくつかあるが、最も大きいのはコレだろう。
オナニーだ。
もともと性欲が強かったわたしは中学で初体験を済ませた。
しかし、その後に起きた男女トラブルで男性器に苦手意識を持ってしまい、SEXが出来なくなってしまったのだ。
当時は膣内の性感帯にアクセスする方法が男性器しかないと思っていたため絶望したが、現代科学は伊達ではない。
生物的な男性器。より正確に言えば人型(ゴブリンやオークを含む)の股間から生えている男性器は苦手なものの、ディルドやバイブは扱えたのだ。
ならば、全力でオナニーだ。となるかもしれないが、プライバシーなどあってないような実家暮らし。
万全の状態でオナニーをすることは性欲にたぎっていたわたしの夢ですらあった。
そんな中、大学入学に際して手に入れた「一人暮らし」の切符。それはまさに、黄金の輝きを放っているようにも見えた。
満を持して高校を卒業し、引っ越した当初はひどかった。
大学が始まるまでの一週間。カップ麺を買い込んで、こもりきりでオナニーに励んだ。
日に何度も果て、陰部が痛み始めても続けた。
だが、そんな生活もある程度続けばは落ち着く。一年たった今となってはいい思い出だ。
まあ、一日最低1度はするが……
「さてと、今日のオカズ探さないと」
大学用のノートパソコンを開くとおもむろにD〇Siteを開く。
そこにはフォローしているサークルの新着情報やあなたへのおすすめがずらり。
わたしが好むのは専ら機械姦や異種姦などだ。
先ほど言ったトラウマから人型の男性器を受け付けないため、自然と特殊な性癖になってしまっている。
「おお、コレは!?」
目に入ったのはよくある脱出系のゲーム。
まず、パッケージが素晴らしい。機械姦をメインに据えたそのゲームは、スライムや触手こそ出てくるものの人型の男性キャラが入っている画像は見当たらない。
さらに内容もいい。多重絶頂するようなハードな責め方は、一度この身で味わってみたいと思うほどに好みを突いている。
「よし、買おう」
値段は3000円と少し高いものの、その分ボリュームがありそうな紹介をされている。
……今月はシフト多めに入ったから大丈夫よね。
クレジットカードで決済を済ませるとゲームのダウンロード画面に移行する。はずなのだが、今回は違った。
「お客様アンケート?」
どうやら、このゲームの製作サークルが出しているアンケートのようだ。
D〇Siteにサークルごとのアンケートがあるとは聞いたことがないが……
とにかくオナニーがしたかったためマウスカーソルを×に動かすが、そこで手が止まる。
アンケートには「ご協力してくれたお客様には特別な体験をプレゼント」との一文が。ゲームの特典ならまだしも『体験』ということは旅行にでも連れて行ってくれるのだろうか。
気になったわたしはアンケートに協力することにした。
「なになに~」
Q1.年代を教えてください。
Q2.性別を教えてください。
Q3.このゲームを買った理由は?
・
・
・
Q18.このゲームの世界に行けるとしたら行きたい?
「結構あんのね……」
改めてみると結構な量があった。
まあ、明日は休みだし時間もある。今日の予定はもうないし、ゆっくりと書くことにしよう。
「『行ってグチャグチャに犯されたい』と。ようやく終わったわ~」
5分、いや10分だろうか。
アンケートの内容をしっかりと書き終え送信すると、ゲームのダウンロードが始まった。
ダウンロードには時間がかかるので、その間に夜ご飯でも食べるとしよう。作り置きの麻婆豆腐がまだ冷蔵庫にあったはず。
ご飯を食べ終えるとダウンロードは終わっていた。zipファイルを解凍して中身を確かめる。
ゲームによって仕様は異なるが、たいていは「ゲーム名.exe」か「Game.exe」をクリックすれば動くようにできている。
今回のゲームはGame.exeのようだ。
起動を終えてタイトル画面が表示される。と同時に眠気が襲ってきた。
突然襲われた猛烈な睡魔に抗うことはできず、キーボードの上に突っ伏してしまう。
「なんで、とつぜん……zzz」
主人が寝たノートパソコンの画面には『脱出ETD!サキュバスの作った最新ダンジョンから逃げ出せ!!』のタイトルロゴが浮かび上がっていた。
◇ ◇ ◇
直前の行動を思い返して、なお思う。
「で、なんでここにいるの?」
いつも通りエロゲーを買って起動したら見知らぬ場所でした。など理解ができない。
言いようのない不安にギュッと毛布を胸元で握りこむ。
直後、
PON!!
目の前で桃色の爆発が起こった。
「えっ?はぁ!?なにごと???」
慌ててベッドから立ち上がり爆発現場から距離をとる。
とはいっても、閉じ込められている部屋は狭い。背中が壁に張り付くほどに後ずさっても、爆炎から1メートル離れるのがせいぜいだ。
「Welcome to ETD!」
そんな言葉とともに煙の切り裂いて現れたのは、ニ頭身のデフォルメされた女の子だ。
女のわたしが嫉妬するほどの艶やかな黒髪に悪魔を思わせる二対の羽。ムチムチ子供ボディを包む、下着のようなラテックス素材の洋服。
そして、浮いている。
明らかにこの世に存在する生物ではない。
「初めまして、ね♡アカネちゃん!!」
正体不明の生物から本名を当てられドキッと心臓が跳ねる。
「あなた、は?」
理解の追い付かない目の前の光景に喉がカラカラに干上がる。
これならば普通の拉致のほうが幾分かマシだったような気もする。
だけど、目の前の存在はそんなことお構いなしだ。
「レイちゃんはサキュバスのレイちゃんよ♡このゲームを運営しているサキュバスの分身体の一人なの!」
ポップな見た目と同じく、子供っぽい独特な声色での自己紹介。
こんな宗教画に出てくるキューピットのような身体で性を司る悪魔の分身らしい。
「レイ、ちゃん?」
「そうよ!アカネちゃんはわからないことも多いだろうから、まずは本体の説明を流すわね♪え~~い♡♡♡」
そういうとレイちゃんは指先から桃色のビームを壁に放った。
壁に当たったビームはその場にとどまり、やがて長方形に広がる。そして長方形の内側には別の景色が映し出された。
まぁ、つまるところはプロジェクターだ。
『こんにちは♡このゲームを運営しているサキュバスです♡♡』
魔法で作り出されたスクリーンの中にはレイちゃんを大きくしたような姿の淫魔が映っていた。
着ているものは同じだが、ムチムチ子供ボディではなくボンキュッボンのダイナマイトボディだ。歳は20前半に見える。
『今回はゲームを購入してくれた方、かつアンケートに答えてくれた方の中から抽選で招待していま~す♡
どうやったのか、詳細は省くけど今の身体はVRゲームのアバターだと考えてね♡
戻れるか、という疑問については大丈夫!そこに浮かんでる分身体に言ってくれれば戻れるよん♡
た・だ・し♡戻れるのはセーフゾーンだけ♡♡あと!一度帰ると再びこの世界には来れないので注意!!あっ!リタイアの代償とかはないからね♡
それと現実の時間は止まっているから、いつまでいても平気だよん♡
あとあと♡ゲームをクリアするとこの世界に好きに来れるようになるよ!!それが報酬、かな?
さて、ゲームのルールは簡単!!
D〇Siteで買ったゲームの主人公に憑依しているので、ゲームを進めて全CG制覇&クリアを目指して頑張ろう♡♡
獲得CGや未獲得CGのヒントは分身体に聞いてみてね♡
それ以外のわからないことも分身体に聞けば答えてくれるよ!!
それでは、よいオナニーライフを!!』
「えぇ……」
要点をまとめると、ここはゲームの世界でCG回収とクリアでいつでもゲームの世界に来れるようになる、ということだろう。
普通なら信じることが出来ないが、宙に浮くナマモノがいるせいで無駄に信憑性が増している。
「アカネちゃん、帰る?」
泣きそうな顔でわたしを見つめてくるレイちゃん。
なんか、子供を泣かせているみたいで罪悪感がひどいな。
とりあえず、
「レイちゃん、このゲームの内容を教えてくれる?」
◇ ◇ ◇
レイちゃんから聞き出したゲームの内容は以下の通りだ。
・このゲームは閉じ込められたこのダンジョンからの脱出を目的としている。
・全10層の階層をクリアすれば脱出できる。
・ダンジョンはセーフゾーン→迷路→試練→セーフゾーンという構造でループしている。
・迷路には罠や巡回のロボットいて、それを避けながら進まなければならない。
・階層の出口は部屋になっており、中で試練が行われる。
・試練の失敗かロボットに捕まると前のセーフゾーンまで戻される。
・3回セーフゾーンまで戻されるとオシオキ部屋でオシオキを受ける。
「う~ん」
総評としては、よくある脱出ゲームというところだろう。
特徴と言えば、迷路と試練が分かれていることだろうか。逆に言えば、そこぐらいしか特徴はない。
それと確認した限りでは、巡回ロボットや罠などは挑戦者の身体能力に応じて調整されるので詰む心配はしなくていいらしい。
さて、ここまで聞いて現実に戻るかどうかだが
「戻る気は、一切ない!!」
「きゃ~♡」
レイちゃんの合いの手がありがたい。
「こほん」
そもそも、わたしの望んだ機械姦され放題、性欲発散し放題の都合のいい世界を捨てる必要性を全く感じない。
さらに、もし何かあっても12時間経てば強制的にセーフゾーンに戻されるらしい。
つまり「とりあえず楽しんでやばそうなら帰る」が成立するのだ。
というわけで
「イクゾ~」
「イクゾ~♪」



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